「甲号証」、「乙号証」をマスターする!新人事務員のための証拠整理入門

『甲号証』『乙号証』をマスターする!新人事務員のための証拠整理入門 『甲号証』『乙号証』をマスターする!新人事務員のための証拠整理入門
最終更新日:2025年12月26日

はじめに

法律事務所に入所した事務職員が任されであろう重要な業務、それが「証拠整理」です。
依頼者から預かった膨大な資料を、裁判の証拠として提出できる形に整える作業ですが、ここで必ず登場するのが「甲号証(こうごうしょう)」「乙号証(おつごうしょう)」という独特な法律用語です。
日常生活では馴染みのない言葉ですが、これらは裁判において「誰が提出した証拠か」を一目で判別するための重要な標識です。
符号を間違えたり、ルールの運用を誤ったりすると、裁判官や相手方に混乱を招き、訴訟の進行を妨げる原因にもなりかねません。

本コラムでは、新人事務職員の方がまず完璧に押さえておくべき「証拠の符号」のルールと、実務上の注意点に絞って解説します。

1. 甲・乙・丙… 基本のルールと役割分担

民事訴訟において、書証(文書の証拠)には提出者を区別するための符号を付けます。
基本の役割分担は以下の通りとなります。
号符 提出者(当事者) 読み方
甲号証 原告(訴えた側) こうごうしょう
乙号証 被告(訴えられた側) おつごうしょう
丙号証 補助参加人・独立当事者参加人 へいごうしょう
通常は提出する順番に「甲第1号証」「甲第2号証」と番号を振っていきます。
ちなみに、当事者がさらに増える場合などは「丁(てい)」「戊(ぼ)」と続くことがありますが、通常の訴訟では甲と乙、たまに丙が登場するケースがほとんどのようです。

2. 「反訴」でも符号は変わらない? 混乱しやすいポイント

実務で最も間違いやすいのが、「反訴(はんそ)」が提起されたケースです。
反訴とは、被告が原告を訴え返すことです。この場合、立場が複雑になります。

本訴:原告 対 被告
反訴:反訴原告(本訴被告) 対 反訴被告(本訴原告)

このように名称は変わりますが、証拠の符号(甲・乙)は入れ替わりません。

原告(反訴被告)は、引き続き「甲号証」を使用します。
被告(反訴原告)は、引き続き「乙号証」を使用します。

「訴えた側だから甲になる」と単純に覚えていると、反訴の際に「被告が訴え返したから、こっちの事件では被告が甲?」と混乱してしまいます。

「一度決まった甲・乙の役割は、その裁判が終わるまで変わらない」と覚えておきましょう。

3. 「枝番号」を使いこなす一体性のルール

証拠整理のもう一つのポイントが「枝番号(えだばんごう)」です。
ここでいう「枝番号」とは「甲第1号証の1」「甲第1号証の2」といった番号のことです。
これは、複数の文書に「情報の強いつながり(一体性)」がある場合に使用します。

枝番号をつける主なケース:

  • ・契約書本紙と、その約款
  • ・一連の会話が記録されたメールやチャット履歴
  • ・同じ場所・物を角度を変えて撮影した複数の写真
  • ・連続している戸籍(除籍謄本と現在戸籍など)

これらをバラバラの号証(甲1、甲2…)にしてしまうと、文脈が分断され、読み手である裁判官に関連性が伝わりにくくなります。
「ひとまとまりの情報」として提出する際に枝番号を活用します。

4. 証拠番号記載の絶対ルール

実際に証拠番号を記載する際、以下の内容が鉄則となります。

1
原本には絶対に書かない。
依頼者から預かった「原本」にペンで書き込むことは厳禁です。
裁判所には「写し(コピー)」を提出するのが基本であり、原本は手元で保管、あるいは期日に持参して提示(原本提示)します。
2
番号は書面の左上などの余白に記載します。
番号は文字の上に被せない。本文や重要な情報の真上に被らないように注意してください。
3
PDF提出の場合もルールは同じ
近年増えているPDFでの証拠提出(mints等)の場合も、PDF編集ソフト上で赤字のテキストボックス等を用いて番号を振りますが、「文字に被せない」「一連の番号を振る」というルールは紙の場合と同様です。

まとめ

証拠整理は、訴訟の行方を左右する証拠を扱う非常に責任ある業務です。

「甲は原告、乙は被告」という基本に加え、「反訴でも符号は変わらない」「一体性があるものは枝番号」というルールを徹底することで、裁判官にとって読みやすい、説得力のある記録となります。
慣れないうちは、番号を振る前に必ず弁護士に「この分類で合っていますか?」「枝番号にした方が良いですか?」と確認を取ることをお勧めします。

確認を行うことが、ミスを防ぎ、正確な実務能力を身につける第一歩です。

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